タイトル |
Bus Simulator 18 |
発売日 | 販売元 | 開発元 |
2019/09/17 | astragon Entertainment | stillalive studios |
Xbox One | Xbox Series X|S*1 |
○ | |
概要 †
本作は実に分かりやすいタイトルの通り、バス運転に関わるものを扱ったシミュレーターゲームです。
基本的にはバスを運転するのですが、用意された街に自身で経由する駅を選択・バス路線を作成し、そこに自分好みの実在バスを割り当てて運転し、運転させます。
前述からバス会社の経営要素もこのゲームには存在していると言っても良いのですが、経営に関しては完全なおまけでそれらすべての選択も最終的にバス運転に影響させるものと認識しておけばよいです。
かつて、東京バス案内というゲームがありました †
アーケード発で後にドリームキャストやPlayStation2で発売された東京バス案内というゲームがあり、編者はそのへんを期待して本作を購入したという所は大きかったです。
実際どうかというとアーケード要素はほぼ無く、ゲーム上での出来ることを増やすために淡々とバス運転を繰り返します。事故ったときのリスクも心配するほどでなく*2、ゲームオーバーにもならず事故後も運転を続けられるので『バス運転』にピンときた人も『シミュレーター』というハードルは感じさせないように様々な配慮がされているゲームといえます。
では、箇条書きで東京バス案内と比較する要素を挙げていきましょう。*3
- お客さんはあくまでお客さん
- 東京バス案内では運転を重ねるごとに特定の乗客のストーリーが繰り広げられます。これが実に人間味を感じさせるストーリーで、この辺は東京バス案内をスコアを意識するばかりのアーケードから離れられる数少ない魅力の一つと言えます。一方本作の乗客は運転中に乗客同士の会話もしくは独り言は複数パターンで発生するものの特にゲーム的な展開はありません。それよりもお客さんなので、様々な仕事を運転手に与えてくれます。「大音量で音楽を楽しむ客」「バス停で降り忘れた客」「ゴミを発生させる客」「バスのドア開閉を阻害する客」それぞれに個別の対応が必要になります。また、交通インフラとして不可欠な仕事として、車椅子客が来た場合にも特別な操作が求められます。色々な仕事があるので、乗客に思い入れるスキは本作には存在しません。
- 町並みは無難
- 東京バス案内は路線ごとに東京の景観をほぼ再現されています。路線から脱するとゲームオーバーになるので一本道と言えるでしょう。路線ごとのテーマがハッキリしており、その楽しみ方や難易度も分かりやすく差別化されていて少ない路線でも何度も走りたくなるような工夫がされています。本作は一つの街(オープンワールド)を舞台にしています、地域ごとに景色のテーマや一方通行道路の有無等に違いはあるものの交通量や横断する人の多さに特別な差がつけられているということはありません。設定でそれらを多くすることは出来ても、その設定が反映されるのは舞台となる街全域なので景色に反して少し違和感は生まれがちです。とはいえ本作は路線を自分で作成できるので、同じ路線を何度も遊び直す東京バス案内と比べると、新たな路線を考えてはプレイし考えてはプレイをして新鮮味を感じるのが本作の特徴と言えるかも知れません。
- アーケードとシミュレーター
- ここを言ってしまうとここまでに比較した意味を自ら壊してしまいそうですが、あくまで東京バス案内はここまでに説明し通りバス運転をテーマにしたアーケードゲームです。操作は実にシンプルになっています。一方で本作は、バス運転をシミュレーションする為の要素が多くあります。東京バス案内には無い操作や要素を思いつく範囲で挙げてみます。
+
| | 本作のシミュレータ要素
| - 前述した乗客行動の多彩さとその対応
- 発券・運賃操作(専用の機械をガチャガチャします)
- 車庫出入り
- 道路状況の変化(ランダムでバス停を塞ぐ車両や道路を狭くする工事に遭遇します。また舗装がボロボロになった道路は徐行する必要があります)
- キセル乗車が無いかどうかのチケットチェック
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- 初心者向けでもある
- 本作は後に例を記述しますが設定によるカスタムが可能で気楽なプレイが出来るようになっています。編者もそうだったのですが、シミュレータで警戒してしまうところにこの配慮はこの作品で最も評価する所かも知れません*4。
その他の本作ならでは †
- バス運転を色づける経営要素
- 経営はおまけであると冒頭で書きましたが、そのものはおまけであるとしても、そこで設定したことが自身のバス運転に影響を及ぼすことはこのゲームの特徴です。ゲーム中のミッションをこなす中で自身で作成した路線には後々CPUドライバーを割り当てる必要が出てくるのですが、その設定した路線を走るバスが別路線を自身で運転している最中に遭遇することがあります。ルートが重なれば前方を行くCPUバスのお尻を追いかけるようなシーンもありますし、逆向き路線であればすれ違いの際にライトを点滅してくれたりします。
- 初心者にも優しい設定群
- シミュレータと聞いて一歩引いてしまう方も安心の設定群があります。往々にしてそれらはシミュレータ要素を削っていくという意味になるのですが、しようと思えば運転と客乗降の為の扉開閉程度にまで路線運行時操作を簡潔にすることが可能で、運転操作そのものも一般的な車ゲーと同等の感覚にする事ができます。逆に道路状況などの条件を厳しくすることも可能です。
- お散歩が出来ます
- 運転中は当然運転席に座る必要がありますが、任意で運転席を離れてバスを降りる事まで出来ます。バスを降りればイチ歩行者として街を歩き回ることが出来てある程度バスの侵入できない敷地まで侵入することが出来ます。かといって特にやることも有りませんが、一点楽しいポイントとして前述したCPUが運行する路線のバスに乗車することが出来ます。プレイヤーがCPUバスに乗車してもきちんと運行を続けてくれるので、そのままお客さんとなって車内でくつろぐのも良しでしょう*5。
残念な点 †
開発元がそれほど力のある会社では無いので、お世辞にもリリースされた時点のゲームとしては映像は綺麗ではありません。元々PCゲームでコンシューマゲーム機向けとしては雑な移植だった事もあり、リリース当初は箱一版は1,2時間もすればクラッシュするような状況でした*6。またフレームレートが途中で著しく落ちる*7事もあって、1路線走りきって色々路線設定などし直したら一度再起動しよう、って思わせる出来だったのです。その後幾度かのパッチでクラッシュに関しては無くなりましたが、移植作品ならではの操作感の問題はガッツリ残っています。中小規模の開発会社という点を大目に見ても凡作かそれ以下評価に落ち着くでしょう。
あとボリュームに関してですが、走れる街はそこまで広いと言えるほどでは有りません。とはいえ不足しているというほどでもなく、まあこんなもんかという感覚です。
新作 †
これを書こうと思った理由になりますが、シリーズ最新作のBus Simulator 21が2021年9月に発売されました。18をプレイした身からすると、マップは一気に広くなったようですがゲームのベースはそれほど変わったようには見えません。ただ今回は移植ではなく全機種同時リリースなので、前項のガッカリポイントはある程度踏まえた開発はされていると信じて編者は購入を検討しているところです。本作にしても新作にしても、手放しでオススメ出来るゲームではありませんが「バス運転」にピンときた人の選択肢としては覚えておいても損はないと思います*8。
最後に †
東京バス案内という過去作の幻想を見続けてきた自分としてはまったく違う感覚のゲームにしばらくハマってしまったわけですが、やはりシミュレータは良いなぁと。ニッチすぎて代替が無いのでクリアした後もたまに触りたくなるゲームってとても貴重だと思います。多くの人には理解することが難しいシミュレータゲームの面白さをバス以外にあればぜひ教えてほしいです。
おまけ †
巨人が現れたわけではなく、右の車の上に何故か乗っかってしまった時の貴重な写真です。
*9